ABU’s blog

世界競馬場めぐりと旧街道を行くの続編

世界競馬場巡り 第19回 現存最古のフリーホールドレースウェイ

東海岸シリーズの最終回はニュージャージ州のフリーホールドレースウェイ。アメリカには古くから数多くの競馬場がありますが、現存する中で最古のものはここのハーネス競馬。1830年に開場しているので、大塩平八郎の乱よりも古いことになります。有名なサラトガ競馬場南北戦争後の1865年からなので、だいぶ先輩になります。もっともそれ以前から多数の競馬場はあったようです。

現在のフリーホールドレースウェイはスポーツブック、サイマルキャスト(他場販売)もおこなっており、どちらかというとそちらがメインの印象。ただ意外とハーネスにも賭けてレースを見守っている人も多いのは印象的でした。


レースはすべて周回二周・1マイル戦なのですが、スタートしてからコーナーまでが非常に短いコース形態で、基本的に1枠から順に隊列が組まれる内絶対有利の競馬場です。もちろんオッズも内に偏るのですが、2周目からのまくり合いで思いのほか前がたれると大荒れになるようです。

競艇の内枠有利と、競輪のラインの理論の複合と考えると、双方のファンの人はより楽しめるかもしれません。

ただし三連単にドカンと突っ込むと、平気でオッズが動くレベルの売上ですので、賭け方は難しいです。

高齢者のファンが多い平均的なハーネス競馬場。最古を感じさせるものは特に何もありませんでしたが、これからも末長く続いてほしいものです。

世界競馬場巡り 第18回 ブリダーズカップデイのハーネス競馬場

2023年西海岸サンタアニタ開催のブリダーズカップ2日目に東海岸から参戦しました。場所はニューヨークにほど近いニュージャージー州メドウランド競馬場です。

 

ここは様々なスポーツを集めたスポーツコンプレックスの一角にあります。アメフトのスタジアム、巨大なショッピングモール、観覧車まであります。さらに日本では見ることができない屋内スキー場(その名もAmerican Dream!)。往年の船橋競馬場を思い出す光景です。

ニューヨークからバスで馬券親父等と一緒に揺られながら到着。入り口にはセキュリーティーチェックがあります。ここはカジノはありませんが、スポーツブックにはかなり力を入れています。

気になる競馬の立ち位置ですが、BCはかなりみなさん気合を入れて買っている様子でした。バーやカフェも営業しており、1人で過ごしてもまったく違和感なく楽しめる空間です。競馬にあきたらゆったりソファでアメフト観戦(+賭け)もいけます。ちなみにこちらのスポーツベットは試合開始後も賭けられます。点差や展開によってオッズが細かく変動しますが、基本的にはどのタイミングでも賭けを楽しむことはできます。

 

他のハーネス競馬場と同じくハーネスの売上は寂しいもののようでしたが、場外馬券場としての存在感は十分ある印象でした。

 

世界競馬場巡り 第17回 年一開催・Far Hills Meeting

アメリカにもグランドナショナルがある、ということをどのくらいの方が知っているだろうか。

障害競走がほとんどないアメリカだが、東海岸ではごく少数行われているし、エクリプス賞には最優秀賞障害馬もある。しかしアメリカの競馬場を思い浮かべて障害コースは普通存在しない。

それもそのはず。障害競走は多くの場合まったく別の場所でおこなわれるからだ。

 

今回訪れたニュージャージー州のFar Hillsでも、年に1回だけ競馬が開催される。レースは障害6レース、平地1レース。

馬券はネットでは買えるが、現地での紙馬券購入手段はなし。紙で購入するには別の場外馬券場などであらかじめ買っておく必要がある。

 

しかしこの開催、競馬はおこなわれているのだが、どちらかというとパーティーがメイン。多くの若者が爆音の音楽を掛けながら飲みまくり踊り狂っている。DJまでいる。

家族連れは駐車した車の後部ドアを開け放して、そこで小規模なパーティーをおこなう。これはアメリカのスポーツイベントでは定番なのだが、Tailgate Partyと言う(辞書に出てこない用法)。

そんなイベントなのでトラブルも多いのか、現地には大量の警察が待機。

 

レースは小さめのハードルをいくつかこえるのだが、引き込み線がゴールという独特のコース形態。ペース、戦略、オッズ、何もかもわからないままレースが進んでいく。



レースは7レースでメインのGrand Nationalは6レースなのだが、パリピにとってはそんなことどうでも良いらしく、6レース開催時には結構人が減ってきていた。

 

ちなみにこの障害競走はサウスカロライナ州などのギャンブル禁止の州でも開催がある。その場合は馬券販売はなしで、単にパーティだけのようだ。

 

イギリスの競馬が社交場なら、アメリカの競馬はパーティというスタイルを地でいく年一開催。これはこれで独特の文化として継続していくのだろう。

 

参考) アメリカのNational Steeplechase Association

https://nationalsteeplechase.com

世界競馬場巡り 第16回 ハリケーンとペンシルベニアダービー

東海岸は9月になると一気に秋モードの気温になり、日によっては最高気温20°以下。同時にハリケーンの来る季節でもあります。

アメリカではケンタッキーダービーを頂点として各地でダービーが開催されますが、開催時期はまちまち。意外と夏以降に開催しているところもあります。

フィラデルフィア郊外のパークス競馬場でおこなわれる3歳限定ペンシルベニアダービー(ダート1800m)は9月23日。当日はハリケーンの影響で残念ながら悪天候だったのですが、雨にも負けず馬券親父たちは集っていました。無料配布の帽子も大人気です。

コースはオーソドックスなアメリカのダート競馬場。カジノ併設で普段はカジノの方が盛り上がっていますが、この日だけは競馬もなかなかの人の入りです。

パドックは屋根のある屋内型で、その外になぜか輪乗りできそうなスペースがあります。ただあくまでパドックは中。

一流馬はトラヴァーズステークスやBCを見据えるので、ここのメンバーはラジオNIKKEI賞と似たような感じ。今年も前走G2で2着の馬が、ケンタッキーダービー13着馬やトラヴァーズステークス6着馬を相手に勝っていました。

そこそこギフトも売ってはいました。普段の開催は見ていませんが、これから寒くなる時期は人は少なそうな気配です。ここはカジノでコンサートなどもやっているので、うまくバランスをとって継続してもらいたいものです。

世界競馬場巡り 第15回 哀愁のハラーズ競馬場

今回はいつもと違いハーネス競馬場。繋駕速歩競走として日本で最後に馬券販売を伴って開催されたのが1971年とのことなので、これは海外でないと観られない競馬です。カナダでは平地競走より人気があるとか。

フィラデルフィア国際空港からほど近い位置のハラーズ競馬場はカジノ併設の競馬場です。カジノも競馬場も人はまばら。田舎の公営ギャンブルとパチンコ店が一緒になったような雰囲気です。

レースも粛々とおこなわれるのですが、売上規模は極小です。最も売れている単勝のトータル売上が10000ドルいかないので、売れていない券種なら簡単にオッズを動かせてしまいます。

今回初めて知ったのですが、ハーネス競馬には歩容の違いでペース(側対歩)とトロット(斜対歩)の2種類があり、両方を走る馬はいないとのこと。確かにレースでも両方がありましたが、予想にどう活かせば良いのかはさっぱりわかりません。

レースはすべてコース1.5周の1マイル戦。先導の車に各馬がついて行き、向こう正面で車がスピードを上げることでスタートになります。1周目3角までに隊列が決まり、ここで外になってしまうともうどうしようもありません。2周目2角あたりからまくり合いがはじまり、4角は広がって直線に向きます。ごくごくまれに内差しが決まることもありますが、車輪がついて横幅が広いので期待はしない方がよいようです。

無料のテレビ付き座席もたくさんあり、他の競馬場で勝負している方もたくさんいました。

今後のハーネス競馬の行く末が心配になる雰囲気でしたが、次は人気のあるメドーランズ競馬場も調べてみたいところです。

世界競馬場めぐり 第14回 Home of Haskell モンマスパーク競馬場

東海岸の競馬場が続きます。今回はニュージャージー州のモンマスパーク競馬場。ニューヨークからも車で一時間くらいの大西洋岸の街です。ここはトラバーズステークスの前哨戦的な扱いであるハスケルステークス(G1)で有名なコースです。

このレースの位置付けは、そもそもアメリ東海岸の3歳戦のスケジュールから確認する必要があります。三冠レースが春に終わってしまうので、次に大きな世代戦は8月末のトラバーズステークス(サラトガ)です。これは日本に強引に当てはめると(春3冠を2冠にカウントして)菊花賞と言えるかもしれません。その前哨戦ですからハスケルステークスは神戸新聞杯でしょうか。たしかに過去の勝ち馬にもアメリカンフェイローレイチェルアレクサンドラ、スキップアウェイ、アリダーなど名馬揃いです。

さて競馬場そのものは人の入りもよく、十分に盛り上がっている印象でした。来訪日はたまたまバンドのライブやシーフードワゴンのイベントをやっていたのですが、競馬、スポーツブックもやりつつレジャーとして楽しんでしました。サラトガに近い印象です。パドックに大きな木があり、さながら森のパドックでした。競馬場ごとにパドックの作りは千差万別です。

また直線前には柵で区切られたスペースがあり、これをパーティースペースとして貸し出しているようでした。これは日本でもぜひ採用していただきたいです。大井、川崎ならやってくれそうな気もします。

ギフトショップも充実している部類でした。東海岸の競馬場はギフトの充実と競馬場の盛り上がりは比例している印象です。

世界競馬場めぐり 第13回 今昔ローレルパーク競馬場

今週はボルチモア郊外、メリーランド州のローレルパーク競馬場です。プリークネスステークスで有名な同州のピムリコ競馬場との姉妹競馬場ですが、これまで何度もオーナーが変更して、その都度様々な変革がおこなわれている競馬場だそうです。ただアメリカの競馬場にありがちな併設カジノはありませんでした。

現在のローレルパーク競馬場は先週のサラトガの盛り上がりと比べると大幅に見劣りするおとなしい小さな競馬場です。規模的には金沢競馬場くらいの感じ。コースも普通。強いて言うならヨーロッパからの出走馬が少ない印象でした(デラウェアが多いのか?)。

しかしここはなんといっても往年の国際招待競争・ワシントンDCインターナショナルが開催されていた競馬場です(定着したものでは世界初)。日本からもタケシバオースピードシンボリらが出走した歴史があります。壁にかつての栄光をしのばせる勝負服の展示がありました。その中の一つにソ連の勝負服が。当時の国家代表としての勝負服でしょうか。国内競馬では個人資産を認め合い国でどのような形で競馬をおこなっていたのかは非常に興味深いです。ちなみに勝負服は赤ではなく青でした。

他に特徴としては屋内型のパドック。レース前に出走馬がやってきて、鞍をつけたりするところを間近で見れます。このタイプは初めて見ましたが、日差しを避けられるので、夏はよいかもしれません。

食事は充実していないし、ギフトショップもありませんが、開催日は多いのでこのような競馬場もしっかり継続してほしいものです。